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甘美な吸血〜貴方の餌になりたい〜
第9章 戸惑い
「俺の最後のわがままを、聞いてくれてありがとう。」
「うん…。」
「詩音莉。今までありがとう。幸せになれよ。」
「うん…。」
泣きそうになるのを、必死で堪える。
今ジョーの顔を見たら、絶対に泣いてしまうから、私はジョーを見れずに、ジョーの腕の中で俯いていた。
そっと私を体から離すと、ジョーは私の髪をクシャクシャして、玄関へと向かった。
そんなジョーの後ろをついていく私に、靴を履いたジョーが振り返り、優しく微笑んだ。
いつも通りの優しいジョーの笑顔が苦しい。
当たり前のように合ったこの笑顔を見れるのも、これからはないのだから。