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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
状況が落ち着き、ベッドでぼんやりとするリナの頭を撫でながら俺はリナに

『次からトイレは1人で出来ないとダメなんだ。』

と教えてやる。リナは俺の言葉を少しは理解したように小さく頷き、そのまま小さなあくびをした。窓の外はもう完全な朝。

『眠いなら眠っていいぞ。』

そう言って俺はリナの頭を撫で続けた。そのまま、安心したようにリナが眠り、リナがずっと握っていた俺の手からリナの手の力が抜けるのを感じた。

リナを起こさないようにリナの病室を出た。病院から出ようとしていた俺は病院の出口の手前で夕べの医者に出会った。医者は俺に

『お帰りですか?』

と聞いて来た。俺は病院の隣の塀に囲まれた広大な敷地を指差しながら

『出勤時間だからな。』

と答える。医者は

『あの子は?』

と聞いて来る。俺は

『眠った。何もなければ夕方にまた来るつもりだ。』

医者にそう言って病院から出た。何もなければ…、つまりテロなどの事件が発生しなければという意味だ。

だから俺は約束なんか出来ない…、リナの身元引き受けもリナの生活保証する約束をリナにはしてやれない。

それでも…

それでも、リナを施設に入れたくない気持ちと約束が出来ない自分に苛立ちを感じたまま、俺は自分の車に乗り込んで病院の隣にある敷地へと向かった。

陸軍中央基地。病院の隣の広大な敷地は軍の基地だ。一応、ここは国内の数十箇所にある基地の中心となる中央司令基地でその一画に陸軍第一師団の本部を拠点としたエリアが存在し、更にその一画に俺が所属する対テロ特殊部隊の本部が存在する。

俺はその本部に出勤する為に基地に向かう。結局、夜は完全に明け、俺は寝不足のまま出勤する羽目になっていた。
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