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堕天使 1st gig.
第3章 現場
まだ初日なのだが、この初日で訓練兵は既に差が決まっている。有能な奴は黙って俺の指示に従い、さっさと腹筋から始めていた。だがそういう有能な奴は僅か3人程度だ。後はなんでこんな基本訓練を今更と不満を顔に出しながらダラダラと始める奴らが大半だ。

最悪なのは、俺の指示の後からグランドに到着して周りの状況を見てから慌てて腹筋を始める奴だ。

遅れて来た挙句、状況判断を周りに合わせれば問題がないとか考えている奴は戦場では生き残れる可能性はまずないと言えるからだ。

俺はそうやって今日から約2週間の間の俺が受け持つ僅かな時間に生き残れる奴と戦死する奴で訓練兵を振り分ける。どうせ戦死する奴に特別訓練とか俺は時間の無駄だとしか思っていない。

だから宗司は俺のやり方にひたすらニヤニヤを続けて来る。毎年、このふるい分けを見ている宗司は

『毎年、飽きずに無茶しますね。』

と俺に言って来る。早い奴なら、そろそろロードに入るという状況を眺めながら俺は適当に

『んあ?』

と宗司に返事する。宗司は

『やれやれ…。』

とだけ言うと顔と名前を把握していない為にロード周回のカウントにもたつくサポート教官を手伝う為に俺から離れていた。

訓練兵の中で今年はずば抜けたのが1人だけ俺の目に入っていた。ロード周回は僅か5周目で既に他の奴とは1周半の差を付けている。

俺は名簿でそいつの名前を確認する。支倉 大地、出身訓練学校は俺と宗司と同じだ。

なるほどねぇ…

今の俺は笑ってそいつを眺めるだけの教官だった。

教官の仕事が終わると俺は宗司と本部へと帰る。そのまま昼休みだから俺は直接食堂へと向かう。待ってましたとばかりに今日は五十嵐が

『来たか?こっち来いよ。』

と俺に言う。女子隊員が多い1課の隊長は何故か俺と飯を食いたがる。俺は五十嵐に

『わざわざ待ってんなよ。』

と呆れて言ってしまう。五十嵐は

『俺とお前さんの仲だろが。』

とか言いやがる。

『残念だが、さすがの俺も五十嵐さんだけは絶対に抱けない。』

『俺はお前さんと違って男はお断りだ。』

『女もまともに口説けないくせに?』

『うるせぇ、さっさと飯食えや。』

こういう下品な冗談が苦手な五十嵐は厳つい顔を赤くして、やたらと可愛くなりやがる。五十嵐は意外と純情タイプだった。
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