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第32章 防衛

五十嵐はただひたすらに

『なんでそんな事したんだ？』

と俺を心配する顔で俺を見ていた。俺はただ笑いながら五十嵐に

『条件が俺１人だったからだよ。』

と答えていた。多分、宗司までは俺の副官として俺の昇進に同行する事は認められる。だが、涼宮や雄太達までは決して認められる事はない以上、俺は俺の小隊まるごとの条件以外は飲む気にはなれなかった。

五十嵐は

『それでいいのか？』

と確認するように言っていた。俺は切羽詰まったように

『リナには悪いと思ってるよ。だけど俺はそういう人間だから、そういうやり方しか出来ねぇよ。』

と答えていた。市兵になれば緊急も無くなり、軍の制限は減り、リナや美優と遊びに行く事も簡単にはなる。だけど俺は雄太達が居ないリナとの生活は考えられないから俺の道を勝手に決めてしまっていた。

五十嵐は納得したように

『お前さんもお父さんになったんだな。』

と笑っていた。俺には女房が２人、家族が２つ。俺が守りたい家族を好きな女を泣かす結果になっても俺は手放す事が出来ないダメ隊長、ダメ親父だ。

そんなガキの考えのままの俺を五十嵐はただ笑って見ているだけだった。

家に帰ればいつも通りのリナが

『次の休暇は秋物のバーゲンに付き合ってよね。』

と言って来る。美優の秋物が欲しいとリナが言っているのだ。俺は自分勝手だから、その後ろめたさからリナには逆らえず

『車出して美優の面倒を見ればいいのか？』

とリナに聞く。リナはご機嫌で

『平和な休暇ならね。』

と笑っていた。リナはそうやって俺にもし仕事の緊急があれば１人で我慢すると言って来る。そうやって我慢するリナだから俺はリナには甘えている。

心のどこかでリナには悪いと思いつつ、俺は俺が選んだ道が間違いじゃないと考えるだけの毎日だった。

休暇の前日、朝からリナは機嫌が良く、俺は普通に出勤前にコーヒーを飲んでいた。後15分もすれば出勤という状況に突然俺の携帯端末のアラートが鳴り出した。

チッ…

といつものように俺は頭で舌打ちする。