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堕天使 1st gig.
第32章 防衛
相手はプロ、下手すれば傭兵…、人質の生命をどこまで重要視するか怪しいから、俺と同じ判断をした上層部はこの任務に二の足を踏んでいる状況だった。

人質の生命を政府から諦めるという確約がなければ、軍に全ての批判が集中し、責任問題にされかねない。

だから、俺達は呼び出されたが情報が集まるまでは現状待機の扱いなのだった。

だが問題は時間だ。海外派兵の撤退は24時間以内との要求が出ている限り、後22時間で人質は殺される。俺はとりあえず武装集団が占拠したとする家の詳細図面や付近の道路図面を取り寄せて状況把握だけを徹底していた。

ハヤトには狙撃ポイントの全ての割り出しをさせ、武装集団の逃走経路なども算出させていた。

出勤から1時間、ようやく、俺達に出動許可が降りていた。条件はやはり人質のレンジャー(救出)が最優先、バックアップに市兵の防衛中隊を派遣済みだとなっていた。

俺は移動する装甲車の中で

『なんで、防衛中隊がバックアップなんだよ?』

と宗司に聞いていた。宗司は

『相手がプロなら、現場が確実に戦場になり、武装集団の逃走手段として戦火の拡大があると想定したからでしょう。』

と俺に冷静に答えていた。武装集団を逃がす為に外側からのテロ組織からの攻撃を想定して、バックアップはあくまでも現場の防衛に回る中隊を配置するという事だ。

『嫌な任務だ。』

としか俺は言いようがなかった。今までだって現場が確実に戦場になる現場は山ほどあった。だが人質がお偉方だというだけで神経質になっている上層部に俺は苛立っていた。

現場に着き装甲車を降りて既に仮設本部を設置済みの中隊の方へ俺は向かっていた。本部のテントの前には綺麗な茶髪の女が仁王立ちしていた。

『悪いがどいてくれるか?』

と俺はその女に言っていた。女は一瞬ニヤリとして俺の為に道を空けていた。

本部に入り俺が

『対テロの赤羽少佐だ。ここの指揮官は?現状報告を受けたい。』

と言った俺の背中から

『指揮官は私だけど。』

とさっきの女から言われていた。
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