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堕天使 1st gig.
第36章 未来へ
俺がリナは市ノ瀬 理菜ではないと否定する事で市ノ瀬 理菜は本当に死んでしまった。だけど10年以上も狂った父親に科学者として実験を受け続けた過去なんかリナには必要ない過去だ。

その過去を俺が理菜を殺して抹消する事でリナがリナのままで居られるのら俺はそれで構わないと思っていた。

ただ、リナの中に残る理菜を見て俺は可哀想だと思ってしまった。記憶を消され、存在を抹消された理菜がリナとして生きる為に消えていくのが悲しかった。

リナは俺の話しを黙って聞いているだけだった。リナには俺が仕事で不幸な少女に出会い、その子が死んだ事で俺が傷ついたくらいにしか感じなかったようだ。

だからリナはずっと俺を抱きしめて俺の髪を撫で続けていた。少し落ち着いた俺はリナに

『俺は馬鹿な軍人でお前に何もしてやれない。だけどお前を愛していてお前だけは絶対に失えない。もしお前を失ったら俺は多分正気を失くして狂っちまう。』

と言っていた。リナは少し照れたように笑ってから

『アルトと出会うまで、自分が何をしてたのか全くわからない。だけどあの日アルトの声がして差し出された手を握った時、私の時間が始まったような気がしたの。だからアルトから絶対に離れたくなかった。アルトに好かれたくて愛されたくて必死だった。結婚して美優がいる今も私の全てがアルトだから私はアルトから離れたりしない。』

と言っていた。だからリナはリナなんだと俺は感じていた。科学者になりたかった理菜ではなく、馬鹿な軍人の嫁で美優の母親がいいと選んだリナは理菜とは別人なんだと俺は思っていた。

『愛してる。』

それを繰り返して俺はベッドでリナを抱く。リナの全てが欲しいと俺はリナを抱き続ける。

『アルト…、もっと…、ああっ…、もっと…、愛して…。』

そう言って俺を求めるリナだから俺はリナを抱き続ける。銀の翼を広げ、蒼い瞳の天使が堕ちて来るから俺はそれを受け止めるように抱いて手に入れる。

俺の、俺だけの堕天使…

そうやって満足する俺はリナの中で果てていた。
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