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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

 すると、電話の向こうで零子は言った。


「今夜は、サラちゃんを待たずに一人で戻りなさい」

「――!?」


 それを受けて、黒木の顔つきが変わる。


「サラちゃんの引き取りは明日。朝には改めて指示を出すわ。だから、それまでは――」

「……」


 黒木の醸し出す空気を電波越しに察したものか。零子は、探るようにして訊ねてきた。


「言いたいこと、あるわよね――きっと、そうなんでしょう?」


 様子を窺うようなその口調は、明らかに普段の零子とは違っていると、黒木は思った。


「いや、別に――つーか、俺がどうのということじゃなく。じゃ、ひとつ、いいすか?」

「どうぞ」

「アイツが、紺野涼の懐に踏み込んだ。その懐の中には、得体の知れない“なにか”がある。コレ、そういう話なんすよね?」

「さあ、それはどうかしら? とりあえず、求めを拒めなかった――サラちゃんにしてみたら、そんなところなのかもしれない」

「それは、同じことですよ」

「え――?」

「アイツが踏み込もうが、相手に踏み込まれようが。その距離感には違いがない。なら、まあ――外野が、とやかく言うことじゃないってこと」


 黒木は髪を掻きながら、最後の方はやや投げやりな感じで言った。すると――


「黒木くんは、それでいいの?」

「はぁ?」


 期せずして、黒木の声に不快さが滲む。
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