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【Onlooker】~サラが見たもの~
第6章 共にする、一夜?

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 紺野潤――妹の生きた証を立ててやりたい。その物語を自らの手で紡ぎあげたい。それを目指したことで、紺野涼は知らず知らず大きなプレッシャーに苛まれるようになった。

 それが傷心の自分を支えてくれた紅谷零子を抱けない、という形で表れた。正しくは、射精ができない。

 その症状を明確にするまでに、幾度も零子には嫌な想いをさせてしまった。

 性的な興奮もありエレクト(勃起)もしている。だのに絶頂を駆け上がろうとする最中、全身に悪寒が奔る感覚に襲われた。熱を帯びていたはずの身体が、一気に冷却されてしまう。

 まるで警報のブザーを鳴り響かせる赤外線のセンサーのように、繊細で敏感だ。

 潤のことは誰よりも思いやったつもりだ。確かに正しくないことはした。それはわかっている。だが――。

 結果的に自らが潤を孕ませ、その脆弱な身体と諦念を宿した心に大きな負担をかけてしまった。更には、その側に居てやることさえできずに……。

 せめて今際の際に立ち会ってやれたのなら、と思った。だけどそれも、自分の罪悪感を軽減したいという後ろ向きの気持ちではないのか。
 
 紺野涼は、こと妹の死にあっては、その罪悪を消し去る方法を失っている。否、寧ろそれを望むことさえないのであろう。
 
 その罪を含め、既に無形である、潤の証を立てたかった。

 紺野涼は、この夢を幾度も繰り返し、その度に自分の罪を胸に刻む。が、それはいい。苦しいこと、それは寧ろ望むことであるから。

 唯一癒しとなってくれた紅谷零子と、互いが自然と距離を置くことになった時も、本心では何処かほっとしていたのかもしれない。

 それだから――最悪なのは、快楽である。それは、いつもこの夢の終わりにあって。



「潤……」

「涼……」


 それこそが、二人が初めて共にした、夜。とても鮮烈な、光景(イメージ)によって齎されようとするのである。


 ううっ……!


 涼はその夢の終わりで、潤を抱き――それが数か月に一度の、夢精。


 も、もう……これ以上は……


 それがおよそ例えようのないほどの怒涛の快感であるが故に、それを倍加させて尚、余りある苦しみと不快感が――


 ……耐えられない!


 涼の心を、蝕むのだ。


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