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【Onlooker】~サラが見たもの~
第8章 危険な、遊技?

 だが、それをまだ認めることは、できずに――。


「いいから――もう、放してください!」


 掴まれた右手首を、振り解こうとするが――


 ギギッ――。


 咲花のネイルの指が強く喰い込み、それを許そうとしない。


「痛っ――!」


 サラは思わず、苦悶の表情を浮かべる。

 と、その時であった。


「さーいかちゃーん!」


 ドサッ!


 一瞬、ふわっと拡がった女の香りが、サラの心を落ち着かせてくれた。

 急に駆け寄った紅谷零子は咲花に抱き着くと、そのままの勢いで二人は床の上で折り重なってしまった。


「ちょっとぉ! なんなの、この酔っ払いはぁ?」

「ウフフ、酔わせてくれたのは、貴女でしょう」

「いいから、離れてよ! 私、そっちの気はないからぁ!」

「あらぁ、意外ね。じゃあ、私が教えてあげる」

「ああっ……ちょ、ちょっと……零子さん!」

 二人のセクシーな肢体が、床の上で艶めかしく絡み始める。

 思わずその顔を染めサラは呆然として、その様子を暫く眺めていた。

 すると――


「ほら、サラちゃんはグズグズしてないで、さっさと行きなさい」

「え?」

「黒木くんこと、追うんじゃなかったの?」

「わ、私が……?」


 サラはさっき咲花から言われたことを気にして、また動き出すことができない。

 そんな様子を見かね、暴れる咲花を抑え込みながらも、零子が言う。


「この咲花を相手に立ちまわった人が、今更なにを怖がるというつもり?」

「で、でも……」

「サラちゃんが今まで見ていた黒木くんは、さっきの映像の中にいたのかしら?」

「……」


 サラはハッとして、思う。


 違う……あれは私の知ってる俊くんじゃ……ない。


「だったら、もう一度自分の眼差しで確かめてきなさい。サラちゃんはまだ、オンルッカーなんでしょ」


 零子の言葉に、その背中を押され――


「ハイ!」


 小気味よい返事を残したサラは、黒木の後を追って駆け出すのだった。





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