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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

 サラがそう不平を言うと、少しだけ振り返った黒木は、珍しく微笑む。


「ハハハ、気にすんな。だって、お前ってまったく変わってねーもんな」

「ああっ、なんかバカにしてない?」

「別に、そんなつもりじゃねーよ。確かに――少し前は、モヤモヤしたこともあったけどな」

「え?」

「だけど、今は――なんか不思議と、スッキリしてる」

「ホント?」

「ああ、だから――」


 黒木はそう言って前を向くと、またサラの手を力強く引っ張り歩き続けた。

 その歩調は小柄なサラを気遣うこともなくて、長い脚で大股に闊歩してゆく。手を引かれたサラの方は時折小走りになりながら、懸命に黒木の背中に続いた。


 もう……。


 総じて彼は優しくはない――否、安易な優しさを示したりはしない。そんなことを潔しとしない性分だ。でも、それが黒木らしさだと思うから、サラは……。

 繋いだ黒木の左手とサラの右手。サラは人差し指でタトゥーの中に隠された傷跡を、そっとなぞった。


「……」


 この傷に、どんな過去があるのか。黒木はそれを話してくれると言う。それが嬉しいようで、それでいて知るのが怖いような複雑な気分。

 だけど、またひとつ彼らしさを見せてくれるなら、サラはそれを見つめたいと、そう思うのだった。

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