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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

 サラにとってその左手は危機から自分を救い安心をくれた。それに刻まれたタトゥーは、いわば強さの象徴のようなもの。だから、サラはそれを怖いとは思わなくなった。

 しかし、その想いに反するように、黒木は――


「心の弱さと醜さ……それを戒めるため、俺はこの傷を穿っている」


 まるで独り言のように、呆然と語る。それから、ハッとしたようにサラを見て、放した左手でグラスをグイッと煽った。


「悪い……」


 口元を拭い、顔を伏せて謝る。そんな黒木の姿を前に、サラは居た堪れなくなった。どこか使命感に駆られ、黒木が自分を追い込んでるように見えていたから。


「俊くん……なんか、無理してない?」

「……!」

「どうしても嫌なことだったら、話さなくたっていいよ。それと、そのチハルさんとだって、会いたくなければ会わなくていいの。なにも知らないのに勝手なこと言って、ごめんね。だけど、逃げなくちゃどうしようもない時だってあると思う」


 そう話すサラをじっと見つめた黒木は、安堵したようにふっと息を吐き出す。強張っていた表情も、少しだけ弛緩させた。


「ホント、なにも知らないくせに、随分と偉そうだな」

「だ、だからごめんって……」

「でも、まあ……逃げてるだけじゃ、自分の行きたいところには、いつまでも行けないだろ」

「え……?」

「俺の場合はそうなんだ。だから、嫌だけど……お前には話してみたいんだよ」


 その真剣な眼差しを受け、サラは心して答えた。


「わかった……私に聞かせて」

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