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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

「……」


 今、横顔を向けた少し拗ねたようなその表情。その中に見つけた“少年だった俊太”の姿を、サラは抱きしめてあげたくて堪らなくなった。

 でも、話は途中で。チハルさんは、この後に来るのだから。

 サラはその気持ちをぐっと押さえて、それまでに踏まえるべきことを訊ねようとする。


「ねえ――その後、俊くんはどうしたの?」


 すると、黒木はまたポツリポツリと話し始める。


「暫くは、どうもできなかった。親父のヤツはたぶん、チハルさんがそういう人だって気づいて、家には寄りつかなかった。元々が、ヤクザな金貸し。ホント、最低な男だよ」

「じゃあ、チハルさんはそれからも――?」

「ああ、精神を乱すことが増えて、その度に俺のことを捌け口にしようとした」

「……」


 また淡々と語られる話に、サラは思わず居た堪れなくなった。


「それで――ついに限界がやってきた」

「限界って……チハルさんの?」

「違う。俺の方だ。チハルさんの行為は、徐々にエスカレートしようとしていたから、それを看過し続けるわけにはいかなくなった。自分をそれ以上汚して、嫌悪するのも限界。そうでなければ、自分のその先の人生を信じてやれなくなる……なんとなく、そう感じていた」

「俊くん……」

「それで一人でマンションを飛び出したのが、俺が十五になる前のことだった」


 十五歳で……家を出て一人なんて……。


 そうして、今の黒木に繋がった時間を、サラは想像する事しかできない。それで知った風なことなんて、言える訳がないから……。


「だが、当然……チハルさんを一人にすることには抵抗があった。いくらガキの時分の俺でも、あのままほっておけば危険だってわかりきっているから。それで、マンションを出る前に手紙を残したんだ」

「手紙……?」


 それは、このような内容だったという。
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