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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ


「くふふふゥ」


 馴染みのない街に来たばかりで、一人。以前の煌びやかな美貌を発した身体は、今は嘘のようにボロボロになっていた。

 それでも咲花は、ご機嫌とばかりに笑う。

 白隅サラに抱いたいら立ちの正体は、まだ租借しきれるものではなかったけれど。紅谷零子に言われた“本気”という言葉は、まだ心に微かな引っかかりを生じさせているから。

 決して小さくない代償を支払い、咲花は虎の威を借る代わりに縛られていた自分自身を解き放っていた。

 そして、少なくとも――


「あんなお嬢ちゃんの真似なんて、今更したくもないから」


 そんな意地が、彼女の中には確かにあった。


「今、なにか言った?」

「ううん……別にィ」


 さっそく引っかけてきた男の問いを受け流し、咲花は訪れた街の景色を見上げた。

 ボロボロの身体たったひとつで、どこまでも昇りつめてやろう。

 それが自分の決めた生き方なら、もう“退屈”を言い訳にはできないから。



「くふゥ」


 咲花の青き瞳が、爛々と怪しい光を放っていた。

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