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隷吏たちのるつぼ
第6章  第五章 誨淫の舎
 叩きのめそうとした矢先、背後から回された手がブラウスを引き裂いた。ブラカップへ手が捻じ込まれ、荒々しく揉まれる。
 征四郎は智咲に加勢したのだ。

「引っ張ってやれっ、智咲」

 涙目で口を尖らせ、乱された髪を手櫛していた智咲が再度リングに手をかけてきた。

「やあっ! 本山ちゃんっ、お願いっ」
「うるさいなあっ! オ、オッパイ揉まれて……、もおっ、やだっ。わ、私がされるんだから、それ。勝手なこと、しないでよおっ」

 眉間を寄せ、清らかだった瞳に見たこともない怨念を込めて睨みつけてくる。バストを揉んでいるのは征四郎なのに、どんなに真っ当な指摘であろうが、全く受け付けない眼色だ。

「うああっ! 漏れるっ。……で、出ちゃう! も、もとや……、出ちゃうってばっ!」

 泣き叫んでも一つ、また一つと珠が出て行く。繋ぐ紐から落ちた滴がヒップを垂れた。

「くっさい」

 智咲の呟きが聞こえて、羞恥が脳幹を焦がし、暴れさせていた脚が止まった。

「おっとっと、智咲、そんなとこいたらかぶっちまうぜ?」

 征四郎が悠香梨を傍らへ投げ捨てた。
 智咲は持ち手を離さなかった。

 最後の数個が連続して飛び出した。体の中にはもう栓はない。内部を一気に濁流が下ってくる。

「ちょっ! ……くううぅっ!」
「ここでするのやめてね。ほんと、くさいから」

 智咲の忠告に、悠香梨は着衣のまま汚物まみれとなる自分が脳裏に閃き、細糸となって残った尊厳が最後の力となって、ばたついて起き上がった。髪を振り乱し、唸りながら周囲を見回す。ひとつひとつを吟味している時間はない。直感的に、そこへと駆けて行った。

 窓枠の下縁に取り付けられたレバーを捻る。かなり固い。塵が固まって開かぬ窓へ、叫びながら肘を打ちつけた。換気用だろう、大きく解放することができない滑り出し窓が辛うじて開いた。窓枠の高さ、外との隙間の幅。直感は誤ってはいなかった。たるんでしまったショーツを足首へ落とし、窓枠に腰を下ろす。

「ウソでしょ」
「とんでもねえ女だな」

 正面で、征四郎と智咲が観察するようにこちらを見ていた。見ないで、と言う前に、後ろから湿りに満ちた破裂音が聞こえた。

 項垂れて二人の目線から逃れ、十指を前に垂れる髪の中に埋めた。
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