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ヒロイン三国ファンタジー
第1章 1 桃園の誓い
蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。

 宗教家であり霊能者である張角がこの理念を掲げ漢王朝を平定しようと黄巾党を興す。乱れ腐敗した漢王朝に不安を抱く民心はたちまち黄巾党を支持し大きな一大勢力となっていく。
朝廷はこの危機に黄巾党討伐の義勇軍を募っていた。


 慎ましく暮らす母娘二人は今日もむしろを織り町へと売りに行く。
「では、母上行ってまいります」
「ええ、気を付けて」
「大丈夫です。売れるまで戻りませんので母上はよくよく戸締りをなさって身体に気を付けてくださいよ」
「ああ、玄徳や……。年頃の娘が……世が世ならもうすでに良きところへ嫁いでいるものを……」
「嘆かないでください。私は嫁に行って煌びやかな生活がしたいのではありません。きっと好機を得て……母上孝行したいと思います」
「うぅ……」
老いた母の背を撫で玄徳は荷車に目一杯のむしろを載せ、出発した。

 彼女は前漢の景帝の第9子、中山靖王劉勝の子の劉貞の末裔という家柄だ。父親を早く亡くしたため暮らしぶりが一気に傾きむしろを織って生計を立てている。また子供の頃に通りがかった旅の儒者が彼女に貴人の相があるという話を父親にしたため娘ではなく息子として育てられることとなる。母親は反対をしたが劉備自身も漢(おとこ)としての生き方に魅力を感じていたので父親の言うように息子として生きてきた。彼女が女であるということを知るものは母親くらいしかいないのだ。
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