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あなたの背中
第3章 人との距離感


あっという間に時間は過ぎ、時刻は20時を過ぎていた。食事も済み、少しゆっくりしている時だった。

「 そろそろ帰ろうか 」

「 そうですね、ごちそうさまでした 」

この楽しい時間が終わってしまうのか、なんて考えると少し寂しい気持ちになったので、顔に出ないようにと営業スマイルを店長に向けた。


ポンッ……


「 えっ…… 」


驚いて思わず目が点になる。唐突に店長が私の頭を撫でた。
その顔はなんだか少し寂しそうだったけれど、彼は笑っていた。


「 さ、いこう 」

ギュッ ……


そう言うと、私の右手をギュッと握った。握ったまま出口へと向かい、店員さんに"ごちそうさま"と笑顔を向けると車の助手席まで私をエスコートして行く。


「 どっ、どうしたんですか?急に… 」

「 今日はデートでしょ?はい、どうぞ 」


助手席のドアをあけ、私が座ったのを確認すると優しくドアを閉める。本当に、まるで、紳士的な彼氏のように。


「 よかったでしょ?ここ 」


車を走らせながら私に聞く。もちろん悪いわけなんてない。料理も雰囲気も私は大満足だった。


「 すごく気に入りました!でも…ありがとうございます 」

「 ん? でもって…なに?」

「 いや…だって、私ただの従業員ですよ?」

「 ただの、じゃなくて"大切な" ね。」

「 … それってどういう…… 」


店長は、よく曖昧に応える。だからわからなくなる。
今日の出来事なんて、まるで恋人同士みたいで……

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