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やめられない牛丼屋
第2章 エリアマネージャーの視察
僕は本部からの電話を切り、カレンダーの11月15日に赤い丸をつけた。

(やばい。どうしよう。。)

会社の本部からエリアマネージャーが視察に来ることが決まったのだ。視察ではちゃんとマニュアル通りに牛丼を作り、無駄なく営業をしているのかをチェックされる。厨房の業務は僕が担当していたが、いかんせんずぼらな性格で、マニュアル度外視で牛丼を作っていた。

牛丼大盛りと注文が入れば、規定の量よりも肉も多めにしたり、ごはんもきちんと計量せずに提供していた。お客さんからは不満は全く出ず、むしろ多店舗よりもサービスが良いと評判だった。

飲食業では賞味期限をすぎた食品はすぐに廃棄するのが通例だ。うちの牛丼屋は牛肉の品質管理が徹底されており、分単位で賞味期限がパッケージに印字されている。最初はマニュアルに忠実に1分でも過ぎれば、牛肉を廃棄していた。しかしゴミ箱に廃棄するのはあまりにも惜しいので、最近では期限を過ぎても1日以内ならお客さんに提供していた。

いろいろバレるとまずいこともあるが、エリアマネージャーの前でマニュアル通りにやっていれば大丈夫だろうと思い気にしないことにした。

視察は客の数が少ない深夜二時からだった。僕は二時前をさす時計を横目に、厨房をいつも以上に掃除していた。
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