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愛しい記憶
第13章 水(回顧)
川がうねる。
荒れる水面。
手を繋いだ俺と姉ちゃんの心は穏やかだった。
ここまで、何も言葉を交わすことなく来た。
怖いものは何もない。
姉ちゃんも同じことを思っているのか、見たことがないほど、その表情は安らかだった。
俺の微笑みに、姉ちゃんは微笑み返したあと、少し俯いた。
「ごめんね……」
お腹に手を当てた姉ちゃんは、罪のない犠牲者に声を掛ける。
「姉ちゃん………」
「うん……」
「いこっか」
俺の声掛けに、姉ちゃんは幸せそうに笑った。
笑わせることが出来て良かった。
もう何も思い残すことはない───
一緒に前へ進んだ。
ふわりと身体が浮いて…
荒れ狂う川へ身を投じた瞬間、
これまで以上の幸福感が俺を襲った。