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愛しい記憶
第5章 愛しい記憶


家に着いた俺は、息を切らせたまま部屋の中心で辺りを見回す。



出て来てほしい…


どうしても会って、さっきの話の続きをしたい──…




床に膝をついて、体の前に両手を広げた。



手のひらが汗ばんでいる。



そして、ゆっくりと両手を握ると、はぁっ……と息を吐いた。



身体を締め付けるこの感覚。


以前も経験した。



愛しくて愛しくてたまらない───



自分の名前さえも、覚えていなかったというのに…


この“ 愛しい ”という気持ちだけは、忘れられずに自分を苦しめている。






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