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秘密のピアノレッスン
第15章 グラス
「更紗……どこだ?」


母は開けっぱなしで出て行ったようだ。
ドアが開き、先生が私を呼ぶ声が聞こえる。

すぐに立ち上がったが、足がもつれて倒れ込んでしまった。

「更紗!」

先生がリビングに現れて、私の腕を抱える。
私の顔を見た先生の顔が悲しげに歪んだ。

目元にぐっとタオルを当てられて、「病院へ行こう」と抱きあげられるが、大事になるのが怖くて抵抗した。

「あ、あの、た、大した傷じゃないかもしれないから……」
「それでもだ。今も腫れてきてるし、顔に傷が残るかもしれないのに。保険証はどこ?」

先生は、とても怖い顔をしていた。

「……わからない……です」
「とにかく、行こう。……一人にはしておけないよ」

喉が詰まるように苦しくて、熱い涙が落ちる。
先生が持ってきてくれた白いタオルを握りしめて、道路の脇にとめている青い車に乗った。
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