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秘密のピアノレッスン
第16章 呪縛から
結果はやっぱり、予想通りで。
家には、誰も帰った形跡はない。
置き手紙も框の上そのままにして、ドアをしっかりと締めて、車で待つ先生の元へ戻る。

「ママ、帰ってきてないみたい……」
「…そう」

またシートベルトを締めて、今度は学校へ。
あまり校門の近くまで行くのは、と先生に言おうとしたら、「少し離れたところで停めるね」と断られた。

先生は、私の心配ごとを次々と察してくれる。
10歳上だとそうなのかな。でも、先生よりもっと年上のはずの母には、こんなことはなかった。

「実家に帰った理由だけど」
運転をしながら先生が話す。

「君のお父さんの連絡先を調べに行ったんだ。あと、おばあさまの家もね。ちゃんと番号はあったから、俺から電話してもいい?」

先生から、パパやおばあちゃまに?

「で、でも、ママがいなくなったって知れたら、ママがみんなから叱られちゃうから……」
そう答えると、先生の瞳が少し驚いていた。


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