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秘密のピアノレッスン
第6章 秘密のレッスン
5分ほどして、動揺が落ち着いたのを見計らってくれた先生は私をレッスンルームに連れ出した。

「滝沢さん。コーヒー飲む? 今日はレッスンはいいから、コーヒー飲んでから帰りなさい。レッスンは別の日に振り替えてもいいし」

先生は本当に、何も見ていなかったかのように、自然に話しているけれど、私は自分の馬鹿さ加減を痛感して、また泣けてきた。
でも、先生を困らせちゃいけないから、指先で涙を拭いて、テーブルについた。

砂糖とミルクを入れて、銀色のスプーンでかき混ぜる。
珈琲色から、カフェオレ色に変わったのを、うつむきながら見つめていた。

先生は私の斜め前に座って、長い足を組み、コーヒーカップに口をつける。睫毛が影になって、妖艶さにどきりとした。
ずっと素敵だとは思っていたけど、仕草がセクシーなんだなぁ……。
盗み見るようにしていたのに、だんだん目が離せなくなって。
先生は伏せていた目線を上げて、私を見つめた。
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