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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第6章 開封
「至急の用件とは、何だ」

后の無事の出産ののち、妻と子の元に赴く王の「一緒に行こう」という無粋な誘いを振り切って、副大臣は執務室に戻りました。
茶を手配して、ぐったりと椅子にもたれているところに、部下から至急の相談に伺ってもいいかという打診がありました。
友である王の一喜一憂につき合わされ、振り回されて疲れてはいましたが、至急とあれば致し方ありません。
副大臣は、一杯のお茶を飲み干す間だけの休息のあと、至急の相談を抱えた部下を招き入れました。
そこで部下から聞かされたのは、例の名宛人不明の書状の一件でした。
話を一通り聞き、持参していた現物も見せられました。
確かに、下々のものが送れるような質のものではありません。

副大臣は、この件は自分が預かると部下に告げ、部屋から下がらせました。
そして、書状を矯めつ眇めつ検分し、しばらく考えた後。
大臣の元に相談に赴くための、先触れの使いを手配いたしました。

大臣は先王の腹心、副大臣は当代の腹心です。
副大臣には、この書状をどのように処理するか、裁量する権利は十分にありました。
けれど副大臣は、経験の浅い自分が判断するよりも、酸いも甘いもかみ分けた大臣に相談してから書状をどうするか決めるほうが良かろう、と判断したのです。

大臣からは、すぐに訪いの承諾の返事がありました。
副大臣は身支度を整え、書状を手に、大臣の元へ向かいました。

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