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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第11章 ツグミの決断
「・・・それでは、私も共に、私の出来る限りその呪いを負いましょう」

しばらく黙っていたツグミが、口を開きました。

「それは!」
副大臣が、思わず椅子から立ち上がります。

「私宛ての書状です。書状を呼び込んだ私にも、責任があります。
私だけに呪いを移せたら良いのですが、それは出来ない相談ですので、せめて」
ツグミはそう言うと、自分を一人にしてほしい、と願い出ました。

「そんな・・・そんなことは、許さぬ!!」
怒りを顕にした王に、ツグミが溜息混じりに言いました。

「王よ。時間がありません。呪いを移すことが出来るのは、赤子が生まれてから一昼夜だけなのですよ」
ツグミは、もう全てを決めてしまった様でした。

「黒い魔女の家に生まれた私には、この十年は、勿体無いくらいの毎日でした。これ以上の幸せは無いと思うほどに」
今の状況にふさわしくないほど軽やかに歌うように呟きながら、ツグミは部屋の中の面々を見回しました。

「やめろ、頼む・・・止めてくれ」
ツグミは、王に向かって、にっこりと微笑みました。
そして、懇願する王に応えることなく、空中に指で何かをすばやく描き、呪文を唱えました。
その途端、部屋の中に居た大人たちの体から、ふっと力が抜け、糸が切れた操り人形のように床に崩れ落ちました。

「お元気で。この先どうなろうとも、この国の弥栄を、祈っております」

そう呟くとツグミは、赤子の方に向き直りました。
王と良く似た温かみのある茶色の丸い目をきらきらとさせて、生れ落ちたばかりの世の中を、機嫌よく眺めています。

「ごめんなさいね・・・」
ツグミは、赤子をそうっと抱き上げました。

「いい子ね・・・さあ、私と一緒に、あなたの最初のお仕事を、致しましょうね」
赤子の小さな手を握り、頬ずりをして、少し潤ませた目を一旦閉じて、深呼吸をして。

ツグミは、生まれたばかりの赤子と共に、自身の最後の仕事に向かったのでした。



・・・それから、小さなこの国に、何年もの月日が流れました。
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