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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第16章 弟王子と義妹姫
「えーっと・・・うわ!あいつめ、こんなこと書いてきてるよ」

釣り書きを包んだ薄紙を開いて現れた表紙には、美しい飾り文字で「祝!99人目!あと一人で三桁!」と、書かれていました。
ハンダマ王子は飾り文字の名手なのですが、職人ではないので、なかなか披露する場がありません。
そのため、機会があればいつでもどこでもどんなものでも、喜々として飾り文字をしたためたがるのです。

「あらまあ、また腕を上げられましたね、ハンダマ様。ほら、この『99』の、見事なこと・・・姫様。これ、額装しましょうか」
バンシルが表紙を、しげしげと眺めます。
お世辞を言わないバンシルは、滅多に人を誉めることがありません。
バンシルに誉められて、王子は今頃寝台でクシャミをしているかもしれません…もっとも、服を着ていないせいかもしれませんが。

「ちょっとー、バンシルー。何が悲しくて、叶わなかったお見合いの記録を額装しなきゃいけないってのよ!!!」
姫はぷんすかしながらバンシルの淹れたお茶を呷り、熱さのあまり長椅子に突っ伏して、悶絶しました。

(あー・・・何やってるんだろう、私・・・このまま一生、このままなのかなー・・・)

「あーもう・・・この際、バンシルでもいいやー・・・」
だんだん憂鬱になってきたスグリ姫は、うめきながら長椅子から起き上がりました。
そして、ぎょっとした顔のバンシルに、畳み掛けるように告げました。

「結婚しよう、バンシル。」
「やです」
「なんでよ!!」
「なんでよと聞かれること自体がなんでだ?と思いますね」
バンシルは侍女ですが姫の乳兄弟なので、プライベートでは全く遠慮がありません。

「大丈夫です、安心してください。姫が嫁に行くまでは、私も嫁に行きませんから」
「そんな一蓮托生やだやだー!ぬるま湯に浸って、一生このまんまだよ!!50になっても90になっても、同じこと言ってるんだよーーー!!」

そう叫ぶ姫の姿に、バンシルは心の中で思いました。
・・・どんだけ長生きするつもりなんだよ姫、と。
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