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あの星に届かなくても
第1章 それぞれの夜

「ふ、んっ、あっ」

 紗恵はシーツに顔をうずめ、漏れ出る声をベッドの中に隠す。高い位置から激しく奥を突かれ、背中に冷や汗が滲むのがわかる。

「ほらっ……本当は、こうされたかったんだろっ」

 漲る若さと無骨さを最奥にぶつけられる。未開発の女だったら、痛さと恐怖で泣きだしてしまうかもしれない。
 紗恵は拘束された両手を握りしめながら、いったいなんの遊戯だろう、と滑稽に思った。羞恥か、調教か、それともレイプか。そういったものは揺るぎない信頼関係を築いた者の間に成り立つ精神的な“プレイ”なのだ。肉体的な支配で主従関係を結ぼうとするなど愚かなことだと、この男は知らない。
 腰を打ちつけられるたびに、どこからともなく噴き出した液体が飛び散り、シーツにぼたぼたと落ちる。

「ははっ、潮吹いてる? すげぇ」

 そのうわずった声と太腿を伝う生ぬるい感覚が、それを自覚させる。後ろから攻めることに飽きた男はいったん拘束を解いて紗恵を仰向けにすると、今度は手枷のみならず足枷も使い、紗恵をベッドに磔(はりつけ)にした。
 紗恵は抵抗を諦めて目を閉じ、自分だけの妄想の中の快楽に身を委ねることにした。今夜の目的は達成したのだから、あとはこの男の好きにさせてやればいい。

 この男も被害者だ。みな、被害者なのだ――。

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