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甘党な愛
第23章 二十三

 その晩、家に帰った途端、星窪が私の部屋へ入ってきた。

「椿、結婚話のことだけど。あれ相手方が断ってきたそうだ」

「えっ?!そうなのか?!」

 葎だ。葎が断ってくれたんだ……。

「明香さんじゃないなら無理だそうだ。良かったな」

「うん!」

「お前色気もないし、特別美人でもないし。相手方は懸命な判断だったと思うぞ」

「うんうん。……って、うるさい!星窪!」

 星窪の言葉に一瞬頷くも、私はすぐに叫ぶ。でも……良かった。本当に。私が結婚したい人は、八雲しかいない。

「それで、社長から伝えておく様に言われたんだが」

「パパが?何だ?」

 続けて話す星窪に、質問する。と……

「今度新工場を台湾に建てるらしい。その責任者に椿を任命すると」

「私が?!新工場の責任者!?」

「良かったな。工場長だぞ。一週間後、台湾に行け」

「無理だ!」

 微笑む星窪を見ながら顔を青ざめると、また叫んだ。

「……お前、会社を継ぐ気ないのか?」

「ない!そんなもの……」

 ないに決まってるだろ。何を今更。今までほったらかしていたくせに。私には期待していないと言っていたくせに。台湾なんか言ったら、八雲と離ればなれになるじゃないか!そんなの嫌だ!



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