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甘党な愛
第7章 七

「……っ」

 やった!夜逃げ大成功!自由へ羽ばたける!

「もう二度と来るか!こんな屋敷!」

 感極まって思わず叫ぶと、私は屋敷の門まで歩き始めた。……一々広い土地にあるから、屋敷の玄関から門までが遠い。時間でいうと、歩いて一、二分。だが、三人からはもう逃げれたのも一緒。

「こんばんは」

「あ、こんばんは」

 歩いている途中、すれ違い様に挨拶をされれば、ペコリと頭を下げながら挨拶も返す。人には礼儀正しくしなさいと、子供の頃から母親に教わって生きてきたから。見ず知らずの人とも仲良くしなさいと。

「椿ちゃん、散歩?」

「ええ、今晩は月が綺麗なので」

「あはは、そっか~」

 暗闇で良く顔が見えないがそのまま質問されると、私は丁寧に返事を返す。すると相手も愛想良く笑いかけてきて、私の左手を握った。

「じゃあ、一緒に見よう」



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