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甘党な愛
第8章 八

 何でまたこうなった……。

「はい椿ちゃん、風邪薬!ちゃんと飲んで、いっぱい着て、暖かくして寝るんだよ!」

 屋敷にて。あれから私は私の部屋へ連れ込まれると、ベッドへ半ば強引に寝かされた。ニット帽もマスクも、羽織っていたダッフルコートもそのままで、上から毛布と布団を四枚も被せられると重たいわ暑いわで蒸し返る様だった。

「……」

 まさか通りすがりの人が恵だったとは……今考えれば、屋敷の私有地なんだからそれもそうだ。一緒に手を繋いで月を見て、私はバカか。ベッドの側に立つ恵から薬を受け取りながら、自分自身に呆れる。

「だから風邪ひいてないってば……」

「無理しなくて良いよ。痩せて胸ぺちゃんこじゃん。食欲もない?」

「……」

 これは元々に決まっとろうが。そう言いたかったが、恵の後ろへ視線を移すと、一言も話せなかった。




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