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園主の嫁取り(くすくす姫サイドストーリー)
第1章 果樹園の後継者
都から二日の距離にある、南の地。
その市街地から離れたところに、この地方で一番大きい果樹園の園主の屋敷がありました。

家屋は平屋で、それほど広くはありません。
しかし、敷地は広く取ってあり、敷地内にはより優れた果樹を育てるための圃場、実生の果物を苗まで育てる苗圃、この地域より南の果樹を育てるための温室までありました。
屋敷に隣接した果樹園は、場所によりさまざまな果物が植えられていて、多くの人が働いておりました。

この地では昔から果樹栽培が盛んでしたが、産業として確立したのは、そう古いことではありません。
先代の当主に先見性があり、天候任せの地域の一産業でしかなかった果樹栽培に、経済活動としての視点を持ち込みました。
より価値の高い果物を作ること、それがより価値を持つ地域に販売すること、果物を加工して価値をあげて売ること、特定の果物の与える印象を良くするような噂を流して流行を作ること。
そのようなことを行ったのは、先代当主が初めてでした。

それほど大きくは無かったこの果物園は、先代の手腕によって、地域の一大産業になり、やがて、雇用も産み出しました。
ではありますが、先代は生涯独身で、跡継ぎが居りませんでした。
果物園に関わる人々は、跡継ぎの問題を憂えました。
中でも、長老会議と呼ばれる、果物園にかかわりのある六軒の家を代表する六名の人々は、跡継ぎ候補をあちこちから見つけ出してきました。

そのたびに長卓を囲んでの会議が行われ、長老六名と家を取り仕切る家令の併せて七名と、当主による話し合いが行われましたが、問題が持ち上がってからも長い間、跡継ぎは決まらぬままでした。
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