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第14章 　優しさに祝福を

　　


　　楽しくて愛おしかったあの日々の欠片に触れたくてマンショを訪れたら彼女の表札は、なくなっていた。
　父親の圧力の所為なのかもと思ったが問い質《ﾀﾀﾞ》せば彼女に余計に迷惑を掛けそうで出来なかった。会社前で待ってもみたがついに彼女と逢えることはなかった。


「あいつも、そう想ってる。」


「マスター･･･？」


「お互いに相手を想って忘れていなければいつかまた、逢える。」


　優しく励ましたのは、かつての自分が重なったから。最善の道を選んだハズがとんだ思い上がりだった。


「マスター、ありがとう。」


　和やかなムードが流れる。

　カラン･･･カラン･･･


「おや、いらっしゃい新米パパ。」


「こんばんは･･･強いの、下さい。」


「どうした。瑠々、帝王切開で大変だったんだろう？こんな所に酒飲みに来てていいのか？」