この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠鳥 ~溺愛~
第33章
車を走らせて数分した頃、鏡哉がそう訊ねてきた。
「え……」
先日のことを思い出し、美冬は思わず強張った反応をしてしまう。
(また、するの――?)
とっさに自分は世に言う『都合のいい女』と思われているのではという疑念に駆られる。
そう思った途端、言いようのない悲しさと、それでも鏡哉を恋慕する自分を感じ美冬は言葉を失う。
(私は……きっとこの人に何をされても拒めない――)
それを悟った時、絶望にも似た感情が心を支配した。
美冬の反応で読み取ったのだろう、鏡哉が少し慌てた様に返してくる。
「もう、抱いたりしないから」
鏡哉の返事にホッとした自分と紛れもなく失望した自分がいて、美冬はもう自分が分からなくなった。
その後無言で時間を過ごした二人を乗せた車はマンションへと着いた。
ソファーへ座るように促され座って待っていると、鏡哉が紅茶とコーヒーを持って現れた。
「美冬はストレートティーが好きだったよね」
そう言って目の前に出された紅茶を見て、美冬の心が小さな喜びの声を上げる。
(覚えてて、くれるんだ……)
少しはにかんで「ありがとうございます」と言うと、鏡哉は嬉しそうに笑った。
「やっと美冬の笑った顔が見れた」
「………」
まさかそんなことを言われるとは思わず、美冬の頬が少し染まった。
そんな美冬を愛おしそうに見つめてきた鏡哉だったが、その直後には眉根を寄せて俯いた。
そのまま微動だにしなくなった鏡哉に、美冬は困惑する。
(鏡哉さん……?)
声をかけたいけれど、かけてはいけないような雰囲気が二人を包んでいた。
数分後、ようやく顔を上げた鏡哉は苦しそうな顔で謝った。
「ごめん、美冬……三年半前、君の本当の笑顔を奪ったのは私だ」
「え……?」
まさか謝られるとは思わず、美冬は困惑して鏡哉を見返す。
「私は、君を軟禁した」
「………」
声を絞るようにそう言った鏡哉の言葉に、美冬は息を詰まらせる。
「愛していた……君を死ぬほど愛していた……君の目に入る私以外のもの全てに嫉妬し、君を自分以外の誰の目にも触れさせたくなかった!」
鏡哉はその当時を思い出したように、感極まった声音でそう言い切る。
「最初は手首を縛り鍵を掛けて監禁し、そして……君の心をコントロールした」