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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける
 
――ねぇ、タツミ。このお花、綺麗よねぇ。こういうのを……にプレゼントされたいわ。
――お姉ちゃん、僕がプレゼントする! そうしたら僕と……る? ……る?

 ふと思い出した。
 恋に憧れていたわたしを追いかけてくる巽が、なにかを言った。
 今となってはそれがなんだったのか、わからないけれど。

「……アズ。今日のところは引き下がる。企画をやり遂げたお前の根性に免じてと、三徹の労いのために。だけどな、アムネシアは枯れてなどいない」
「え?」
「枯らす前に、お前が生きたまま散らした。俺は、会社を咲き誇らせることに全力を尽くす。今度こそ、俺のアムネシアを散らさぬよう」

 彼がくれた最後のアムネシアのことを言っているのだろうか。
 机から落ちて枯れてしまった花のことを。

「浮気をしているんじゃないかという妄想か。そうか、お前は自分の目で真実を見なければ、俺を信じないんだな。……わかった。では妄想ではないとお前がわかれば、お前を抱く」
「な……」

 あまりに強引な理屈。凍えた声でそう言い放つと、巽は苛立たしげに目を細めた。

「わからせてやる。お前がずっと目を閉じたままで、アムネシアを勝手に枯れたものだと言うのなら」
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