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僕の彩芽
第12章 十二

「ここの温泉、気持ち良かったぞ」

 そう言いながら豪が脱衣所へのドアを開けると、私は豪の手を振りほどいた。

「豪、やっぱり私、離れに戻るね……」

「は?何で?」

「一人で入ってて!」

「おい……」

 そのまままた暖簾を潜り、旅館の廊下を走り出す。私の足音だけ響く静かな廊下。

 秋人さんとさくらさんの事が気になって、温泉どころじゃない……。

 後ろから呆然と見る豪の視線にも気付かず、私は離れへ向かって一心不乱に走り続けた。

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