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僕の彩芽
第9章 九

「秋人さんからどうぞ……私、お風呂入ってますから」

「ああ」

 そのまま湯のはった浴槽へ入り、体を温める。胸を見られない様に前屈みで、お湯に口まで浸かった。

「ふふ~んん~」

 珍しい……。秋人さんが鼻歌を歌ってる。シャンプーしながら。……鍛えてるのかな。良い体してるな……。

「あー……ポチと入れて幸せだな……」

 髪に付けた泡をシャワーで流す秋人さん。排水口へ流れていくお湯と泡。床にぶつかる雫の音。鍛え上がった秋人さんの体。その光景に思わず見惚れ、急に秋人さんがシャワーを止めて、浴槽へ入ってくると鼓動が跳ね上がる。

「良いぞ、ポチ」

「はい……」

 浴槽から出たら、私も秋人さんから髪と体を洗ってるところ見られるのかな……。嫌だ……。

「私、今日は洗いません……」

「は?汚ねぇぞ?」

「良いです……一日ぐらい」

「ダメだ。清潔にしないと。ほら、立て」

「嫌です……!」

 隣に浸かっている秋人さんから腕を掴まれ、立たされようとする。だが断固として、私はそれを拒む。

「……はぁ。ポチ?」

 ため息を吐いたものの、穏やかな声……。諦めてくれたのかな。

「……」

 浴槽に体育座りしたまま、ほっと安堵した。耳元でドスの聞いた声が聞こえてくると、背筋を凍り付かせたが。

「我が儘言うと、どうなるか分かってんのか?躾るぞ」

「はいぃぃぃ!」

 やっぱり秋人さんは怖い。ペットを躾ようとする飼い主。私の事を好きな筈がない……。
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