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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第5章 くすくす姫の誕生日
「触っちゃダメか?」
さすがにもう入れねぇぞ、と言われた姫は、何と言ったら伝わるか、動きにくくなった頭で一生懸命考えました。

「えっと、ちょっと沁みる…のは、ここに触らなかったら平気だから、良いんだけど。何回もきゅってなり過ぎたせいか、奥の方が…腰とかお腹とかが、重たいの」
姫は、もしかしたら近々月のものが来るせいもあるのかしら、とちらっと思いましたが、サクナに告げた内容だけでも充分恥ずかしかったので、そこまでは口には出しませんでした。

「奥が痛むのか?」
「すこーしだけ。だから、今日はもう、きゅってなる様な事は、だめっ」
沁みる方は姫が言った通り、擦れなければ大丈夫でしょう。
けれど、体の奥の重だるい感じは、姫の体がきゅんと強く反応するだけで、鈍く重さを増すようでした。

「…分かった。済まねぇ、ヤり過ぎた」
「ううん。私が気持ち良くなり過ぎちゃったせいでもあるんだもの」
姫は毎度のことながら今だけは神妙に反省しているらしいサクナの方を、上目遣いで窺いました。

「…『ごっこ遊び』で、痛くなるほど気持ち良くなるのは、悪い子?」
「お前が悪い子なら、俺も同じだろ」
そう言うとサクナは姫の髪を撫でて、そこに口づけました。
「お仕置きする?」
「今度な。」
「ん。楽しみ」
「…お仕置きってのは、いつから楽しみなもんになったんだ?」
「ふふっ」
首をすくめて笑った姫の目蓋にサクナが口づけたとき、遠くから小さく日付の変わる時計の音が聞こえてきました。

「『くすくす姫』の最後の誕生日も、終わったな」
「さいご…?」
サクナが呟いたのを聞いたスグリ姫は、だんだん眠たくなってきた頭で聞きました。

「さいごって、どうして?もう、くすぐったくないから…?」
「それも有るが」
サクナは、もう半分眠っているような姫の頬にちゅっと軽く口づけて、囁きました。

「来年はもう『姫』じゃ無ぇだろ。春が来りゃあ、お前は俺の奥方様だ。」

こうして、くすくす姫の最後のお誕生日に、長い長い睦言を交し合ったスグリ姫と婚約者は、柔らかい眠りの中に落ちていきました。
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