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僕だけの母さん
第5章 主役
物足りなかった。

母さんに指令を出してイジめてやるつもりが皆中途半端になってしまい、結果、加藤に対抗できるような事実も秘密も作れていなかった。

所詮、中学生が考える事など、こども騙しに過ぎないのか?

がっかりした。

自信がなくなってきた。

母さんに罰を与え、僕だけの母さんを取り戻そうとしてきた努力は水の泡だった。



加藤の奴、もう来ないつもりか?

母さんには飽きたというのか?

悔しくもあり、がっかりもした。

僕の大事な母さんを好き放題弄んでおいて、飽きたらポイと捨てるのか?

母さんが可哀想過ぎた。





そんなある日。

しばらくぶりに加藤が我が家にやってきた。

だが、今回は加藤一人ではなかった。

父さんと加藤の勤める会社の同僚や部下達が四人だった。

つまり父さん、母さん、僕を含めると7人の賑やかな夕食会だった。

「奥さん、大勢で押し掛けちゃってすみませんね」

荒木という父さんの部下だという30代位の男が母さんに謝っていた。

「いいんですよ♪いつも主人がお世話になっているんですから」

母さんは皆に手作りの料理を振る舞いなから微笑んだ。

「しかし、課長の奥さんは美人ですねえ♪」

荒木という男がさっきからしきりに母さんを誉めていた。

「本当♪可愛い美人て感じですね♪」

紅一点の吉田という20代の女性がアルコールの酔いに顔を赤く染めながら甲高い声を上げる。

「あらあら、皆さんお上手ね♪」

母さんが嬉しそうに微笑んでいる。

皆に料理とビールを振る舞いながら、会話にも参加している母さん。

僕は黙々と料理を食べながら皆の会話に耳を傾けていた。

「僕はお名前何て言うの♪」

紅一点の吉田という若い女性が聞いてきた。

まるでこども扱いだった。

「翔太です」

大して美人でも可愛くもない吉田という女性に素っ気なく応えてやる。

そんなこんなで盛り上がっている最中、僕はふと母さんと加藤の姿が見えない事に気付いたのだった。



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