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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「なるほど、一理ございますね。特に差し支えも無いと存じますし、合理的で宜しいのではないでしょうか」

「あ?『奥様』だぁ?!……良いな、その『奥様』……すげえ名案かもしれねぇな、『奥様』。そうか、『奥様』な、『奥様』。…うん、悪く無ぇなあ…『奥様』か…」

「え!?…おっ、『奥様』ぁあああ!?…やだっ!!やだやだバンシル、それ恥ずかしい!!まだ奥様じゃないのに奥様って言われても、心の準備が…え?準備するために呼ぶの?!早く慣れて、こういう無駄な動揺が和らいで、平気になるように!?…むりっ!なれない!!無理無理ぃいいー!!」


「大丈夫です、『奥様』。徐々に慣れておいでになってますよ」
バンシルは『奥様』呼びを提案した時の三者三様の反応を思い出しながら、姫に請け合いました。
家令のクロウは最初から全く態度が変わりませんが、他の二人は『奥様』呼びに対してほぼ反対の反応をしておりました。
『奥様』であるスグリ姫は呼ばれるたびに恥ずかしがって悶え、『奥様』のお相手であるサクナは姫が『奥様』と呼ばれるのを耳にする度に、デレデレと口元を緩めておりました。

「…それに『奥様』だけでなく、旦那様にも慣れて頂かないと…御当主なのに、あれでは締まりがなさ過ぎます」
「『旦那様』っ!!」
スグリ姫はバンシルの言葉を聞いて、近くに置いてあったクッションに突っ伏して悶えました。
「何を今更…『旦那様』って呼び方は、前から聞いてらっしゃるでしょうが」
「でもっ…『奥様』と対になると、『旦那様』って響きが…なんか、なんだか違うんだものっ…!!」
「…あの、バンシルさん?」
姫が悶え続けているのを見てバンシルが溜息を吐いていると、デイジーのおずおずした声がしました。

「どうしました?」
「お仕事が終わりました。いかが致しましょう」
侍女の中で最も年長でしっかり者のヴァイオレットが淡々と尋ね、背後ではマーガレットが無言で頷いておりました。
「それでは、まずお洗濯物を持って行って下さい。その後は、三人で先にクロウ様の所に行っておいて頂けますか?私も後で行きますので」
「かしこまりました。では奥様、失礼致します」

スグリ姫は侍女達の挨拶を聞いて、ぱっと身を起こしました。
「みんな、有難う!また後でね、クロウさんに宜しく伝えて」
三人はにこっと笑って、それぞれが洗濯物を抱え、部屋を出て行きました。
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