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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「ビスカスにとっては、怪我も仕事の内ですもの。それに、ここまでの怪我をしたのは、油断したビスカス自身の責任よ。私は、家の者の犯した間違いを家の者が止められた事を、本当に良かったと思っているわ」
「ローゼル様…」
泣き腫らした顔をしながらも毅然と告げたローゼルの姿を見て、姫は痛ましく思いました。
ビスカスは、いつもローゼルと一緒に屋敷に来て、姿が見えない時であっても、どこか近くに居りました。仕事だから、護衛だからと言われればそれまでですが、ローゼルの居ない所でもローゼルの事を何かと気に掛けていたビスカスを思い出すと、胸が詰まりました。
ローゼルも、今は気丈に振る舞って居りますが、姫が立ち去った後、目が腫れる程泣いていたのです。口で言っているほど平気な訳では無いことは、姿を見れば一目瞭然でした。

「ローゼル。ビスカスはこれから屋敷に運んで寝かせるから、お開きになったら、お前はそこに付いててやってくれねぇか。時々クロウを遣るし、怪我の手当てに明るい奴が居るから、そいつも付ける」
「分かりました。お心遣い、有り難うございます」
「それから、ご領主様とお前の兄貴二人に、事情を説明したい。会がお開きになってからになるが…向こうで伸びてる人間は、説明した後連れて帰って頂いて、それなりの対応を取って頂く様に要求する」
「はい」
そこまで話したサクナは、ローゼルのドレスにも血が付いているのに気が付いて、眉を顰めました。

「…つっても、お前のその格好じゃあ、宴席に戻れねぇか…スグリも同じか」
「私は、ドレスの色がこんなですから、少しの間でしたら気付かれないと思いますわ。お父様とお兄様方に声を掛ける間だけなら、多分」
その時、何か考えていたらしいスグリ姫が、ぱっと顔を上げました。

「サクナ。私は着替えなきゃダメだと思うけど、ローゼル様は髪とお化粧をこちらで直させて頂いて、私の持ってる薄衣をお貸ししたらどうかしら?薄衣を羽織って頂けば、ほとんど分からなくなると思うの」
「お前、め……名案だな!」
サクナはうっかり「珍しく良い事思い付いたな!」と言い掛けましたが、姫の名誉を損なうのではと気が付いて、途中で止めて言い直しました。
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