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イかせ屋…2
第5章 その男、強引につき…



昌さんと私を乗せたリムジンが嵐山に着く。


「うわぁー!」


渡月橋がくっきりはっきりと見える。

河は綺麗なせせらぎを見せて1羽の白鷺が河から飛び立つ姿に見蕩れる。

絵葉書で見た光景そのもので美しいと思う。


「渡月橋、渡ってもいい?」


そう聞いた私の肩を抱き、ゆっくりと私をエスコートして昌さんが歩き出す。


「少し来る季節が早かったな。もうひと月ほど後なら紅葉で山が燃えるような景色になる。」


昌さんが更なる嵐山の美しさを教えてくれる。

渡月橋を渡ると可愛らしいお店で昌さんが金平糖を買ってくれる。


「ちょっと、付き合ってくれ。」


突然、昌さんが私を連れて行きたい場所があると言い出した。

観光気分だから何処にでもついて行きますの私。

昌さんが向かったのはあるお寺…。

お参りでもするの?

まさか安産の神様とか言わないわよね!?

なんだか馬鹿な妄想するだけで赤くなる。

お寺の中の通路を昌さんは慣れたように歩き、私をその場所へと導く。

それは離れのような小さな建物。

そこに入れば奥に立派な祭壇があるけど目立つ仏像などはないし何もないガランとした部屋だと感じる。

なのに昌さんが天を見上げる。

私はそんな昌さんを見上げる。


「うわぁっ!?」


思わず声を上げちゃう。

昌さんがクスクスと笑う。

静かにしないといけない雰囲気…。

でも私が見上げた昌さんの向こうに、いや…、天井の一面に描かれた、昌さんの背中の刺青によく似た龍がギョロりとした目で私を見下ろしてる。


「雲龍図…、母が好きでよく見に来たんだ。」


昌さんが静かに言う。

お母様が好きだった龍。

それを背中に描いた昌さん。

もしかしたら、昌さんってマザコンかしら?

お母様みたいに私にもなって欲しいの?

色々と考えてしまうから、また不安になって来る。



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