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イかせ屋…2
第8章 その男、酔っ払いにつき…



昌さんの為だから…。

私が初めて一緒に過ごせる昌さんのお誕生日だから…。

思い描いてたお誕生日とは違うけれど、昌さんの為にという気持ちは変わらない。

生クリームを泡立てながら、そんな事を考える。

生クリームの角が立ったら風太君に味見をして貰う。

少しは私に警戒心が無くなった風太君…。

小さなスプーンで生クリームを掬って


「あーん…。」


と私が言うと小さなお口を


「アーン…。」


と開けてくれる。

ちょっと可愛いかも?

昌さんとの子供が欲しくなって来る…。

パクリと生クリームを舐めた風太君が満面の笑みを浮かべるから味は大丈夫なんだと確信する。

今度、4歳になる風太君…。

子供は正直だから、美味しくないとすぐに顔をしかめるとわかちゃんが言う。

その風太君がご機嫌の笑顔だから何とかなりそうだとホッとする。

ケーキのスポンジもふっくらと焼けた。


「「うわぁーっ!?」」


風太君とわかちゃんが同時に声を上げる。

スポンジを冷ます間にローストビーフを焼き始める。

仕事を終えたお父さんが台所に来る。

黙って私に採れたての苺をくれる。


「ありがとう。」


私の言葉に笑顔だけを返してくれるお父さん。

こういう人だから誤解があるけれど嫌いにはならないお父さん。

そんなお父さんにとって自慢の娘である事に初めて自信が持てた。

私がいくら頑張っても跡継ぎ優先だとばかり思ってたから自分に自信を持つ事なんかなかった。

別にそれでもいいや。

となんでも割り切ってサバサバとする性格になっちゃった。

今は自信を持って後悔をしない生き方をすると心に決めた。

新しい自分を家族に見せつける。

更に新しくなった私を昌さんに見て欲しい。

そんな思いを込めてお父さんの苺でケーキのデコレーションをする。



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