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イかせ屋…2
第9章 その男、ヤキモチ妬きにつき…



午後のお茶の時間には、そのケーキを持って曽我のお家に行く。

親分様が出て来る。


「お茶にしましょう。」

「今日の昌は出掛けとるよ。」


親分様の言葉に少し驚いた。


「聞いてなかったのかな?」

「夕べ、仕事だとは聞いてました。」

「そうか…、昼前に急な客が来てね。東京案内に出掛けただけだから、そろそろ戻るとは思うが…。」


親分様が気を使ってくれる。

お茶を飲み始めた時、親分様の言葉通りに昌さんが帰って来る。

その腕には初音さんをぶら下げて…。


「ただいま帰りました。おじ様。」


初音さんが昌さんと腕を組んだまま弾んだ声で親分様に挨拶する。

つまり、今日急にやって来たお客様とは初音さん。


「東京見学は楽しめたかな?」

「それが酷いんですよ。昌ったら『スカイツリーなら京都にもあるだろ?』とか言うんです。」


初音さんは私を全く見ずに親分様と話をする。


「似たようなのがあると言ったんだ。」


昌さんまでもが私を見ずに初音さんと話す。


「京都の人間に喧嘩を売ってる?」

「売ってない。だから送ってやるから、そろそろ京都に帰れ。」

「嫌よ、今夜は泊まる。明日は送ってね。」


初音さんが甘えた声を出す。

ふーん…。

私が植草君と立ち話をしただけでわざわざ京都から来た初音さんが泊まってく事になるんだ。


「そろそろ帰ります。お邪魔しました。」


親分様にだけ頭を下げて曽我家を出る。

昌さんが追い掛けて来てくれる事を期待した。

その期待は見事に裏切られる。

私には絶対に男の人を近寄らせないくせに、自分はベタベタと女を渡り歩くんだ。

悔しさに涙が出る。

お願いだから…、昌さんを取らないで…。

昌さんが居ないと生きていけない自分に悔しくて涙が止まらなかった。



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