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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
●月●日

「あー……眠っ……」

 眠いのに、ろくに眠れない内に、朝が来た。
 眠れなかったなぁ、荷造りやなんかの雑事せいと、今日一日ちゃんとした格好をしてなきゃならねえ面倒臭さのせいと、任されてる仕事にいまいち気乗りがしねぇせいだ。
 欠伸をしながら、窓の外を見る。
 雲のたなびく空が、鮮やかなオレンジに染まってらぁね。こりゃあ、朝焼けって奴だな。
 ……嫌だね、朝焼け。
 朝焼けは雨の兆し、って言うからねー。

 この辺は冬はあんまり雨が降らねえ。だから、この季節に朝焼けを見んのは、珍しい。
 これは吉兆か、凶兆か、どっちでも無ぇのか、どれなんだろう。
 俺ぁ、考えても仕方ねーことをぼんやり考えながら、朝焼けが消えて空が薄青くなるまで、ぼーっと窓の外を見ていた。


     *     *     *


「おはよう、ビスカス」
「おはよーごぜーやす」
「……お前、その格好でその口調なのは、珍しいな」

 今日の大仕事の為の身支度を終えて会場に着くと、先にいらしてたタンム様に苦笑された。
 今日ぁ注意してくれる御方が、居やせんからねー。
 口調を注意される事が無きゃあこのままのが楽だし、「襟を緩めない!」と注意される事が無きゃあ若干だらっとしてんのが楽だ。楽って素晴らしい。
 ……素晴らしいんだけどな、楽。ちょいと物足りねー気もするね。

「ビスカス。今日の段取りなんだが」
「へえ」

 いけねえ。仕事だ、仕事。

「少し変更したい。良いか?」
「へい、勿論でさあ。俺でお役に立つ事でしたら」
「有り難う。実は、昨晩ちょっと足を傷めてね」
「……え。」

 俺が、言われる事の先を予測して固まってんのに気付かねぇのか無視してんのか、タンム様は話し続けた。

「余り無理には動かさない方が、良い様なんだ。申し訳無いが、私と役割を交換して貰えないかな」
「……宜しいんですか?」
「どうして?」
「交換する役割って、タンム様、親族の役目をやる奴ですよね?俺ぁ、親族って言うにゃあ、ちょっと」
「構わないさ。お前は、縁は遠いが親戚だろう?それに、これは、お前にしか頼めない」

 あー、そりゃそうですねー。そう言われちゃあ、断れねーね。

「……畏まりました。代役務めさせて頂きます」
「助かるよ。宜しくな」

 タンム様のご要望を承って肩を叩かれた俺は、返事の通り、畏まった。
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