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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第3章 害獣ではありません

●月●日

「どんな具合だ?」
「まだ分かりやせんねー。今んとこ問題なく育ってるみてーですが」

今日俺は麦畑の仕事をしている。
ここは果樹園だが、果物を加工して菓子にしたりする時は、穀物も使う。
今は必要なだけ余所から買ってるが、麦も良いのがありゃあ作ってみようってことで、試しに植えて見てるんでさぁね。
今は麦の芽が育ってきて、踏んづける時期ですぜ。根っこが良く張るようにってな。
サクナ様と麦の様子について話していたら、俺の目の端を動くものが横切った。

「あ、スグリ様」
「は?スグリ?」
俺の言葉を聞いたサクナ様は、変な顔をして辺りを見回した。

「スグリが居る訳ねぇだろ。バンシルと雇い人の面接をしてる筈だぞ」
「あ、すいやせん。カヤネズミが居たんでさぁ」

「…………は?」

「いやー、どうもカヤネズミを見ると、スグリ様を思い出しちまって」

…………………………。

ウチのお嬢様のいらっしゃる辺りから、ぶふっと吹き出す音がしたんだが、空耳でしょう。
サクナ様はと言えば。

「…ビスカス…てめぇ…」
こりゃ、お怒りになろうかどうしようか迷ってる顔だね。
ここはお怒りを治める方向に誘導しねーとな。
俺はサクナ様にもカヤネズミ=スグリ様説に興味を持って貰うべく、まずは聞いてみた。

「サクナ様は、カヤネズミをご覧になったことがお有りで?」
「いや…」
「可愛いもんですよ、デカいネズミと違って、悪いこたぁしねぇし」
「可愛い…」
お。食いついたな、「可愛い」ってとこにな。
頭ん中でなんか想像してんな、何かは知りたくねーけどな。
ここは、もう一押ししとかねーとね。

「へえ、ありゃあほんとに可愛いもんですぜ。どっかに巣がありゃ見られるんですが」
「巣?」
「カヤネズミは、草やなんかで巣を作るんでさぁ。きっと、この辺に…ああ、これこれ」

前にカヤネズミの巣を見た辺りを探してみると、程なく巣が見つかった。
「これです、これ。巣も可愛いもんでしょう?」
カヤネズミの巣は、草が丸まって玉のようになっている。
鳥の巣に似てるが、まん丸いから、見慣れりゃすぐ分かる、ってな。
サクナ様は巣をじっと見て、謎の言葉をぼそっと呟いた。

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