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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第12章 猿と刃物は使い様です
 だが、サクナ様がやると三回で済むとこが、俺がやると、何回かかってんだw……って位、時間がかかる。 教えて貰った通りに切っても、その間にオレンジが潰れて来らぁね。
 それでもしばらくやってたら、コツが分かって慣れて来た。

「おっ……おおおお一個切れやしたああああ!」
「良いぞ。……うん、まあまあだな」

 誉められたのに持ち上げてみたら、下で粗方繋がってやがった。がっくり来たが、そこだけ切ってバラバラにすりゃあ問題無ぇと言われたので、俺は気を付けてゆっくり慎重に、繋がったオレンジをバラバラにした。

「あとは、最後まできっちり切る事を忘れねぇだけだな」
「……重ね重ね、すいやせん……」
「まあ良いさ。時間は幾らでも有んだろ。切り損ないは煮ちまったら良い」

 そんな調子でも、ゆっくり切らせて貰ったんで、何個分かはオレンジが貯まった。サクナ様はそれを網みてーなもんに並べる様に、俺に言った。

「並べるとこまでやっときゃあ、干すのはまとめてやっといてやる。乾く頃にまたここに来て、最後まで完成させろ。お前の手による初の品物だ、出来上がったら俺が買い取る」
「え。買い取って、どうすんですか」
「お前、自分じゃ使わねぇだろ?それに、贈りてぇ奴も居ねぇんだよな?お前の作なんて、ある意味貴重な品だからな。俺に買わせろ。年明けにスグリが帰って来たら、茶でも拵えて二人で飲むさ」
「分かりやした。お願いしやす」

 お気遣い頂いて、有り難ぇね。俺の切ったオレンジがお二人の話の種になるなんざ、嬉しいやねー。やる気が出らあ。

「……ローゼルは、どうしてる?あいつも元気にやってるか?」

 オレンジを並べんのは、刃物を扱うよりゃあ難しく無え。ゆっくりじっくり並べていたら、サクナ様が話し掛けて来た。

「ええ、まあ」

 まあ、多分な。お嬢様にゃあ最近あんまり会わねーから、正確なとこは分からねぇけどね。
 たまーに見掛けるお嬢様は、少し沈んで不機嫌そうだ。俺に腹ぁ立ててるからなんだろうね。あんな言い方しちまったんだから、仕方ねーよな。俺の居ねぇ時は、もうちっと伸び伸び生き生きしてらっしゃるんだろうね。

「タンムに聞いたぞ。まさか、従兄弟が見合いの相手だとはな……ローゼルの警戒心も、問題無えって訳だ」
「まあ、そうですね」

 俺が生返事していたら、サクナ様は非常に答え難い事を言ってきた。
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