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本の夢…
第3章 秘密の恋



泣き止んだ私の手を引いて先生が歩き出す。

ゆっくりと私に合わせて先生が歩いてくれる。

出来たばかりの大きな公園に行った。

この街の中心になる予定の新しい大きな公園。

今はまだ公園内は美術館と図書館が建設予定になっている。

冬だしお正月だから誰もいない。

バラ園があってガゼボと呼ばれる西洋風東屋のベンチに先生と座った。


「貸してあげた本は愉しかった?」


暖かい缶コーヒーを私の手に握らせて先生が聞いて来る。


「先生…、あの本はなぁに?」

「官能小説っていう大人の本。」

「官能…。」

「そうちょっとエッチで普通の恋愛小説よりもリアルな部分があったでしょ?」

「はい…。」


先生がふふふっと笑った。


「もっと…、読みたい。」

「うん…、でもね。本の中は現実じゃない部分もいっぱいある。だから、上垣さんには本の中に逃げる子にはなって欲しくないな。」


でもね…、先生…。

誰もが私を要らない子って言ってるんだよ。

先生にお父さんとお母さんの話をした。


「可哀想に…。だけどね…、僕は上垣さんを要らない子だなんて思った事はないよ。僕は上垣さんにもっといっぱい本の中も現実も愉しいって事を知って欲しいと思っている。」

「現実は違うもん。」

「そうかな?」

「違うよ…。現実だと胸がドキドキとかしないし、お腹がきゅんきゅんするとか絶対にしないもん。ヒリヒリとしただけだもん。」

「それは違う。」


先生が私の頬を撫でて来た。


「上垣さんはあの本のどこのシーンが好きだった?」

「主人公が初めて先生にオーガニズムを教えて貰うところ…。」

「上垣さんも知りたい?」

「先生が教えてくれるの?」


先生のコートを握りしめた。

先生になら教えて欲しいと思った。



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