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本の夢…
第2章 本の先生



淋しいお家…。

だから私は本の虫…。

本の中でいっぱい恋愛をする。

本の中の彼氏は私に優しくしてくれるから…。

そうやって現実はボーッとして本の中で生活をする子になった。

高校の2年の二学期の終わりだった。


「俺と付き合ってみないか?」


学校の裏庭で3年生の知らない男の人にそう言われた。

付き合うって恋愛をするって意味だよね?

本の中が現実になるチャンスが来た。


「はい。」


斉藤先輩にそう答えた。

先輩はいきなり私の首を掴むと私の口に先輩の口を重ねて来た。

ガムの匂いと味がした。


「帰り、正門で待ってろよ。」


先輩がそう言って私の前から立ち去った。

キスしたんだ。

初めてのキスだった。

ちょっとがっかりとした。

本の中だと、キスは甘くて切なくて胸がドキドキとかして頭が熱くなるみたいな表現ばかりなのに…。

現実はガムの味がしただけ…。

ドキドキもしない。

頭も冷静なままだ。

現実ってこんなものなの?

その日の学校帰りは先輩に言われた通りに正門で先輩を待った。

先輩が来て私の手を繋いで歩き出す。

でも、本の中の恋人同士と違って手を繋いで歩くのって結構辛いとか思った。

本の中の恋人はお花畑を手を繋いではしゃぐように歩いたり、森の小道をゆっくりと2人でいつまでも繋がって居たいと願うように歩いたりしている。

現実は150しかない私が175くらいある先輩にグイグイと引き摺られるようにして歩く。


「遅ぇな。」

「ごめんなさい…。」


繋いだ手が離れそうになるたびに私がパタパタと走るみたいな歩き方。

段々と息が上がってはぁはぁと苦しくなって来る。

恋って苦しくなるって本に書いてあったけれど、こういう意味?

そんな事を考えた。



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