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第8章 大人への１歩

公園を出ると先生が握っていた私の手を離した。

私との関係は終わったから？

涙がまた溢れる。


「ごめんな…、夢…。大丈夫だよ。僕は夢の事をちゃんと考えている。夢には今は辛いかもしれないが今だけは僕を信じて欲しいんだ。」


先生が私の涙を何度も拭って話をする。


「何を…信じ…たらいいの？」


止まらない涙…。

溢れる悔しさ…。

先生への想い…。


「夢…、今夜だけは我慢をして、絶対に僕は夢を裏切らないから…。だけど担任の先生もお父さんも夢を心配して探しているんだ。だから、明日、必ず図書館に来て欲しい。あの場所は夢と僕だけの場所だからね。」


私の場所？

もう他の子の場所になったんじゃないの？

終わった秘密の恋に涙が止まらない。


「夢を泣かせるのが一番辛いんだ。」


先生の切羽詰まったような言葉に胸の奥が痛くなった。

先生が担任の先生に携帯で電話をする。

先生とおばぁちゃんの家に向かった。

家の前にはお父さんと担任の先生が居た。

いきなりお父さんに抱きしめられた。


「ごめん、本当にごめんな。お父さんが全部悪かったんだ。あの女の子供だからと夢を突き放したお父さんが全部悪かったんだ。」


初めてお父さんに抱っこされた気がした。

小さな頃、私が少しでもお父さんに抱っこをされると


「甘やかさないで！」


とお母さんが怒鳴った。

だから今、初めてしっかりとお父さんに抱っこをされた。

担任の先生が私の頭を撫でてくれる。


「上垣さんはしっかりと今まで通りに頑張りなさい。推薦は必ず取ってあげるからね。」


先生の力強い言葉に安心感が生まれた。

担任の先生は塚原先生と帰って行った。