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きっかけは映画館
第2章 失恋


大学時代から付き合っていた裕司と…

別れた。

いや、私が振ったことに…

なるのかな。








具体的に結婚の話が出たことはなかった。
でも、いつかは…
そんな話がなかった訳でもない。

話が具体的にならなかったのは、裕司の仕事のせい…
裕司は銀行マン、全国規模で転勤がある。
つまり、転勤族になることを覚悟しなければならない。

だから…その話題から避けていたのだと思う。

そして…
とうとう、転勤…
しかも、離島の支店…

私が仕事を辞めてついていくと言えばいい話…

でも大きな仕事を任されているところだし、仕事を続けたいと思っていた。

また、こっちに戻ってくるまで遠距離とか、他にも選択肢はあるんじゃないか…

任期は4年、そうしたら私は32歳になっている。それに、次の転勤で戻ってくる保証もない。

裕司から、ついてくるか、別れるかの2択を迫られたのだ。

裕司は淡々と…
自分についてきて欲しい等、自分の想いを語ることなく、選択を迫った。


そして私は、別れを選択した。

プロジェクトがなかったら…
裕司がついてきて欲しいと言ったなら…

いや、出した答えにそれは関係ないことだ。



お互い忙しく、最近はデートに行くことも少なくなっていた。

互いの家に行って、ご飯を作ったり掃除をして、週末の自分の用事を済ますだけの生活。

だから、当たり前になっていたのかもしれない。
裕司と一緒にいることも…
そして日常生活の一部になっていることも…


そして…
仕事を辞めて、裕司と二人きりの生活をするという選択は、

私にはなかった…



麻里絵28歳、本日失恋しました。


いや、恋心を失ったのは、もっと前なのかもしれない。


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