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君の瞳に映る白い花【おまけ追加しました】
第2章 芽吹いた想い
「山茶花、綺麗だね」

冬子は昌子が大事に育てている白い山茶花を眺めた。

「一時期病気になってだめかと思ったけど元気になってくれてねぇ」

昌子は山茶花を見て誇らしげに微笑んだ。

幼いころから母子共に面倒を見てくれ、やさしくしてくれた。
悠の方が圧倒的に優秀なのに、いつも冬子のことをえらいね、すごいねと褒めてくれる。

「悠はジョギング?」
「そうみたい。今日はずいぶん早く出てってたみたいよ」

悠は体力をつけると思い立った中学時代から毎朝ジョギングをしていた。
社会人になってからはあまり走ってないと言っていたが、悠も昨日はあまり眠れなかったのかもしれないと冬子は思った。

「冬子ちゃん、昨日悠とご飯食べたんだって?」

突然聞かれて冬子はドキリとした。

「うん。帰り道一緒になって。少しだけ」

昌子は周りをチラチラ見た後冬子にそっと身を寄せて尋ねた。

「・・・・何か聞いてない?」
「何かって?」
「いい人、いるみたいだった?」

どうやら悠の結婚について探りを入れているようだった。
冬子は返答に困った。まさかここで実は自分がプロポーズされているなどと言えるわけがなかった。

「どうかな・・・・」

昌子がため息をつく。もはや掃除の手は完全に止まっていた。

「あの子、結婚する気あるのかしら」
「・・・・おばさん、悠に結婚してほしいの?」
「そりゃそうよ!自分の父親がいくつになるのか、あの子わかってんのかしらね。早く孫の顔見せてあげて欲しいんだけど」

悠は父親が40歳の時に産まれた子だった。なかなか子供に恵まれず、やっと授かったのが悠だった。もうすぐ70歳になろうとしている。
昌子は夫に早く孫の顔を見せてあげたいのだ。

「考えてるとは思うよ」

悠が両親を大切に想ってることは冬子も良く知っていた。
今回の結婚の話も、昌子たちのことを考えてのことに違いなかった。

「あ!帰ってきた!」

悠がジョギングから帰ってくるのが見えた。
昌子はいたずらが見つからないようにコソコソ逃げる子供のように背中を丸めて立ち去ろうとした。

「冬子ちゃん、探り入れてみてね!お願いよ!」

そう言って箒を持って工場の裏へ消えていった。

悠がこちらに気がついて近づいてきていた。
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